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使用時における除菌剤ローテーションの評価:実施試験の設定

2023-06-28 15:58

コラム

除菌剤に要求される資格は、懸濁試験・表面試験・実地試験3つのフェーズによって構成されます。最初の2つのフェーズは、欧州または米国の規格に記載されており、代表的な表面範囲に対する表面試験は、懸濁試験よりも強固であると考えられています。どの規格にも記載されていないのは、実地試験です。 Tim Sandle/文


実施試験は、実際に使用する場所で試験を行い、その有効性を環境モニタリングデータに関連付けるため、クリーンルームの除菌剤認定試験の中で最も重要なものです。実地試験では、ラボベースのテストを行い、主要な理論的パラメータ(濃度や接触時間など)を実際の条件に適用します。クリーンルーム用除菌剤では、ラボでの試験において使用される微生物の数がクリーンルーム内で予想される数よりも多い場合、より大きな課題が生じることが知られています。実地試験では、単一の除菌剤の評価だけでなく使用頻度を評価し、活性スペクトルと作用機序が異なる2つの除菌剤のローテーション(通常EU GMPAnnex1で要求される殺芽胞剤と非殺芽胞剤のローテーション)の評価を行うこともできます。

この記事では、3つの異なるグレード(EU GMPグレードB、C、D)のクリーンルームで実地試験を実施するために適用できるアプローチの概要を説明します。ここでは、Ecolabが製造した2つの除菌剤(Klercide WFI過酸化水素水、Klercide WFI Quat)を使用したケーススタディに基づいており、表面環境モニタリングと生存する微生物の評価を用いて有効性を評価できる方法を示しています。

【除菌剤有効性試験】

除菌剤の有効性評価は、性能試験を通じて、懸濁液(浮遊状態)またはクリーンルームの表面からの微生物バイオバーデンを許容レベルまで減少させることで実証されます。除菌剤の有効性評価は、施設内の微生物汚染を制御するために必要な殺微生物、殺真菌、及び/または殺芽胞性を実証する文書化された証拠を提供する必要があります。表面評価を実施するのはユーザーの義務であり、欧州医薬品庁および米国FDAの規制対象施設では、これが必須です。ヨーロッパ内では、表面試験は機械的作用有り(EN 16615:2015)または機械的作用無し(EN 13697:2015 + A1 2019)で実施することができます。


【実地試験 】

実地試験は、1つ以上の除菌剤の交換など、新しい清掃/除菌管理の実施前に、分離された微生物(頻度と種類)を調査することです。目的は、新しい除菌剤が生産設備のバイオバーデンを制御するの上で、既製品より優れている、または同等であること実証することです。実地試験が実施されていない場合、実地試験を遡及して適用することができます。この要件は、欧州統一規格(EN 14885:2018)及び該当するUSPの章(<1072>)の両方に記載されています。

実地試験の主な目的は次のとおり

•清掃と除菌の頻度の確立
•除菌剤のローテーションの頻度の確立
•残留物を除去する必要があるかどうかの確認

実地試験の重要な基準は、変更管理によってカバーされる必要があり、試験開始前に受入基準の概要を示すプロトコルが設置されていなければなりません。試験は、使用する全てのクリーンルームを対象とし(グレードAはデータがあまり生成されないため例外となる可能性があります)、データの有意義な評価を行うために十分な数のサンプルを含める必要があります。また、2種類の除菌剤のローテーション頻度を評価するために、十分なモニタリングセッションを組み込むべきです(得られた結果が偶然によるものではないことを確認するために最低3つ)。サンプルの種類に関しては、除菌剤が表面に塗布されることを考慮すると、空気中サンプルの採取はほとんど意味がありません。サンプルの種類は、クリーンルーム内のさまざまなタイプの表面材を代表するもので、床面および作業する高さの場所から採取する必要があります。コンタクトプレート、またはスワブとコンタクトプレートの組み合わせのいずれかを使用できます(コンタクトプレートからの回収が一般的には優れています)。重要な事前評価として、コンタクトプレートの寒天培地に使用する中和剤の選定があり、除菌剤の残留物を中和できることが証明されている必要があります。2つの除菌剤ローテンションの配合が大きく異なる場合、適切な中和剤の選択はより複雑になることがあります。

除菌剤の有効性は、性能試験を通じて実証されます


【ケーススタディ】

Ecolabの除菌剤であるKlercide WFI過酸化水素水、Klercide WFI Quat の使用前後のクリーンルーム表面の微生物状態を評価するために、実地試験が実施されました。これは独立した研究であり、試験は3つの異なるEU GMP規格の医薬品クリーンルームで実施されました。この研究では、微生物のバイオバーデンと回収について、各部屋の除菌前と除菌後の条件の違いを調べ、さらに部屋や異なるサンプリング位置の違いを考慮して行われました。

ローテーションの頻度と使用頻度

2つの異なる除菌剤は、配合や活性スペクトルと作用機序が異なります(ローテーションに必要)。除菌剤の性能は、コンタクトプレートを使用して微生物数とその種類を評価しました。サンプルは除菌前と除菌後に採取しました。

各クリーンルームは、以下の管理体制で除菌を行いました。
•Klercide WFI Quatを4週間、Klercide WFI過酸化水素水を1週間使用
•その後、繰り返し

4:1パターン(Klercide WFI過酸化水素水)は十分なデータを蓄積するために、3サイクル、合計15週間実施されました。この際、十分なサンプルの収集と、必要と予想されるコンタミ防止策の実施との間でバランスをとる必要があります。

グレードCおよびDは毎日、グレードBは1日2回除菌を行いました。

ここでは、非殺芽胞剤(Klercide WFI Quat)と殺芽胞剤製品間(Klercide WFI過酸化水素水)の標準的なローテーションが採用されました。全体のバイオバーデンや回収された生物の種類(特に内生胞子形成細菌または真菌)が適切であれば、ローテーションを見直し、殺芽胞剤の散布頻度を増やしました。

除菌剤の塗布技術

両方の除菌剤の濃度とコンタクトタイムは、事前にラボで評価されています。床への除菌剤の塗布は、汚染物の非脱落モップを使用したEcolabのトリプルバケットシステムを採用しました。表面への塗布は、4つ折りワイプ技術を使った、除菌剤の拭き取りによって行いました。

サンプリング

各クリーンルームは、適切な除菌剤中和剤(レシチン、ツイン80、チオ硫酸ナトリウム、L-ヒスチジン)を含むトリプトン大豆寒天培地を含むコンタクトプレートを使用してサンプリングされました。サンプリングは、圧力と時間を制御するアプリケーターを使用して行われました(サンプリングの一貫性を可能にするために)。プレートは20〜25℃で3日間、続いて30〜35℃で2日間培養しました。これは、クリーンルームの微生物と真菌を回収するための標準的な培養方法です。


部屋は以下の条件で検査されました:
•次回除菌予定日前に、1部屋あたり6枚のコンタクトプレートを採取(条件I)。
•次回除菌予定日以降に、1部屋あたり6枚のコンタクトプレートを採取(条件II)。

サンプルはさまざまな場所から採取され、3つの主要な表面材料を評価しました。

A.床面サンプル:ビニール製
B.作業台の表面サンプル:ステンレススチール製
C.高層部のサンプル:アクリル(ポリアクリロニトリル)またはガラスで採取されたもの

受入基準

収集されたデータは、次のように調査されました。

A.各グレードのクリーンルームの除菌剤の塗布前と塗布後の微生物数の違い。モニタリングの限界値は、EUGMPガイドのAnnex1から引用。
B.除菌前と除菌後の減少量
C.調査期間中の減少量
D.3つクリーンルームのグレード間の違い
E.選択されたサンプルは、回収された微生物と真菌の種について検査。

この検査には、いずれかの除菌剤に対して耐性の可能性がある菌株の検討も含まれる。

調査結果

この調査結果は、クリーンルームごとに分けられています。 グラフ(図1から3)は、除菌前と除菌後の生菌数の経時変化を示しています。 2点の移動平均は、除菌前後のバイオバーデン数を追跡しています。グラフは同じ縮尺で描かれており、比較を行うことができます。

【グレードDのクリーンルーム 】

データでは、除菌剤の使用後、以下のように微生物数の減少が確認されました。

•一般的なKlercide WFI Quatの削減= 71%
•一般的なKlercide WFI過酸化水素水の削減= 56%
•全体の減少率= 70%
図1:グレードDのクリーンルームの結果を示すグラフ

除菌前の環境モニタリング結果では、4つの高い数値(規格外ではない)が見られました。 除菌後の結果では、数値が大幅に減少しました。

【グレードCのクリーンルーム 】

データでは、除菌剤の使用後、以下のように微生物数の減少が確認されました。

•一般的なKlercide WFI Quatの削減= 63%
•一般的なKlercide WFI過酸化水素水の削減= 77%
•全体の減少率= 66%
図2:グレードCのクリーンルームの結果を示すグラフ

環境モニタリングでは、EU GMPの対策レベルからの逸脱は見られませんでした。

【グレードBのクリーンルーム】

データでは、除菌剤の使用後、以下のように微生物数の減少が確認されました。

•一般的なKlercide WFI Quatの削減= 74%
•一般的なKlercide WFI過酸化水素水の削減= 94%
•全体の減少率= 79%
図3:グレードBのクリーンルームの結果を示すグラフ

除菌前の環境モニタリング結果では、4つの高い数値(規格外ではない)が見られました。 除菌後の結果では、数値が大幅に減少しました。

各クリーンルームでは、全体的に微生物数が減少していることが確認されました。また各除染剤アプリケーション間でカウントの有意な上昇がないことも示されました。

この試験の結果は成功でした。確立された方法による実地試験のさらなる拡張は、新しい管理体制の実施前後の環境モニタリングデータの統計的な評価を通じて、新しい除菌剤の有効性を評価することができます。

【Overall comparison/全体的な比較】

結果に関して、図4(下図)では、開始時のバイオバーデン(除菌剤の塗布前)と最終的なバイオバーデン(除菌剤の塗布後)の比較を示しており、除菌剤塗布の週ごとに各クリーンルームでのバイオバーデンが概ね減少していることを示しています。さらに試験中に汚染度が減少するパターンがありました。
図4:試験期間中の除菌剤使用前後のバイオバーデンレベル

図4では、クリーンルームのグレードごとに、バイオバーデンが大幅に減少していることを示しています。クリーンルームのグレードによって、開始時のバイオバーデンに違いがあり、クリーンルームのグレードに比例して、減少していることがわかります。

見過ごされていますが、実地試験を完了することは規制上期待されることなのです。


【Microbial assessment/微生物評価】


除菌前と除菌後の管理体制について、いくつかの代表的な分離株を調べました。この調査の目的は、多数の耐性菌が回収されたかどうかを確認することでした(内胞子形成菌または真菌)。菌の同定は、表現型自動微生物識別システム(Biolog OmniLog)を使用して行われました。

このデータでは、除菌塗布後のモニタリングによりクリーンルームから耐性菌が回収されなかったことが分かります。しかし除菌剤の使用までは、胞子形成微生物であるBacillus属(細菌)およびAspergillus(真菌)が検出されました。これらの微生物は、除菌剤に対してより耐性を持つ可能性があります。これらの発生は、試験期間中持続はしませんでした(Klercide WFI Quatは植物性菌に、Klercide WFI過酸化水素水は芽胞に効果があると考えられるため、両剤の有効性に起因する)。

【Summary/まとめ】

この記事では、除菌剤の認定において重要でありながら見過ごされがちな点、つまり実地試験について説明しました。見過ごされがちですが、実地試験を完了させることは規制上期待事項であり、この記事では、Ecolabの2つの除菌剤(Klercide 低残留過酸化水素水とKlercide低残留Quat)を評価した実地試験のケーススタディの概要を説明しました。実地試験の結果として、除菌剤は有効であり、選択したローテーションパターンは適切であることが分かりました。データはさらに、微生物数どのように減少し、グレードDからAに低下したか示しました。このような変化は、実験室での検査では発見できないものであり、実地試験の重要性をさらに高めています。除菌剤のローテーションについては、芽胞形成菌が時折回復することから、殺胞子性薬剤の使用が重要であることが示されました。

除菌剤メーカーが、適切な接触時間、濃度、およびローテーション頻度に関するアドバイスを提供できるのが理想的です。しかしながら、除菌効果試験の最終段階として、ユーザー自身の施設内で実地試験を実施する必要があります。この試験はプロトコルで概要を説明し、報告書で議論され、そして変更管理とSOPの更新が完了するまで実施されなければなりません。重要なのは、条件が変わった場合、実地試験を繰り返すことを検討する必要があるということです。

元記事: https://cleanroomtechnology.com/news/article_page/Assessing_disinfection_rotation_at_the_point_of_use_Designing_a_field_trial/175279

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